解説
敬語の初めの第一歩は、謙譲語と尊敬語を使い分けられることです。この入り口でつまずいてしまう人も多いようです。
謙譲はあまり聞き慣れない言葉ですが、自分の謙虚な気持ちを表す“魔法の言葉”です。「へりくだる」というこの行為を、「卑屈」と考える方もいるようですが、自分を低めることによって相対的に相手を高めて、相手への敬意を示すことができる、奥ゆかしい言葉なのです。この謙虚な気持ちを表すことのできる謙譲語は、敬語の中でも最も大切な表現だと言ってよいでしょう。これが使いこなせて初めて、一人前のビジネスパーソンと言えます。
そのために、どうしてもマスターしたいのが謙譲語の代表的なかたちの、「お(ご)〜する」です。この「〜」の部分に動作の言葉を入れれば、自分を低めて表すへりくだった表現の謙譲語となります。
お話しする お借りする お願いする
お届けする お電話する お知らせする
ご送付する ご案内する ご協力する
ご報告する ご紹介する ご挨拶する
具体的なフレーズは、「荷物をお持ちしましょう」「のちほどご連絡します」「お待たせしました」のようになります。
「お〜する」というフレーズは、自分を低める謙譲表現なので、相手に対して使ってはいけません。相手の行為を高めたい、敬いたいときは、「お(ご)〜になる」という尊敬表現のフレーズを使います。この二つを混同しやすいので、次のやり取りを覚えておきましょう。
「このカバンをお持ちになれますか?」
「重くて重くて・・・」
「では、お持ちしましょう」
さて、問題のなかの、「お聞きしてください」という【2】のフレーズは、相手の行為に対して「お〜する」を使ってしまっているので、間違いです。また【4】は、相手の行為の「聞く」を謙譲語の「伺う」にしてしまっているので間違いです。【5】は、誤りではありませんが、敬度が低いので、お客様に対する尊敬語としては、不適切です。
問題の例文は一部の例なので、他にも適切な表現はあります。お客様に対する尊敬語の用例として、「お尋ねください」もよく使用されます。
もう1歩
この「お聞きする」「ご送付する」ですが、「聞く」「送付する」などは、自分の行為なので「お」を付けるのはおかしいのではないかと言う人がいます。
それについてはこう考えたらいかがでしょうか。「聞く」や「送付する」「話す」「返事する」などの表現は、「わたし」が「相手に」または「相手から」、聞いたり、送付したりしているので、その「相手」に敬意を表して、「お」を付けているのです。
このかたちの謙譲表現が使えるのは、敬意を示す相手に対しておこなう行為にしか使えません。例えば、自分が聞くという行為でも、「今朝、鳥の声をお聞きした」や「お先にお帰りします」のような言い方はしません。
さらにもう1歩
「お(ご)〜する」をもう少し敬意を高くした表現に「お(ご)〜いたす」があります。
- ○「お待たせいたしました。まもなく発車いたします」
- ○「わかり次第すぐお知らせいたします」
さらに高くした表現は、「お(ご)〜申しあげる」です。
- ○「お知らせ申しあげます」
- ○「くれぐれもご自愛くださいますよう、お祈り申しあげます」
やんごとなき場では「申しあげる」を使うなど、その場に応じて使い分けられるようにしましょう。
相手にたいして敬う表現をするためには、相手の行為には尊敬語を用い、自分の行為には謙譲語を用いることが、敬語の基本中の基本です。敬語の間違いナンバーワンは、尊敬語と謙譲語を逆に使ってしまうパターンですので気をつけましょう。
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